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INTERVIEW 2021.2.19

インタビュー 舟板 昔ばなしの家・中山ミヤ子さん

築180年の母屋。周囲は古い農機具に囲まれ、夜は囲炉裏を囲んでの食事。かまどで沸かす五右衛門風呂……。まるでタイムスリップしたような昔ながらの日本の暮らしが残るのは、安心院町舟板で中山ミヤ子さんが切り盛りする「舟板 昔ばなしの家」。農泊の受け入れ先として、多い時は年間800人もの来客があるという人気の農泊家庭です。

中山さんが農泊を始めたのは、安心院のまちでグリーンツーリズムがスタートした1996年。以来25年間にわたり、国内外から訪れる人々の心を癒し続けきました。中山さんの温かい人柄に惹かれ、常連になる来客者も少なくありません。また猪肉の汁物、すっぽん鍋、安心院産ワインに漬けて酩酊したどじょうを焼いていただく「どじょう焼き」など、手間ひまかけて作る郷土料理も魅力のひとつです。中山さんにとっては「特別なものじゃなくて、子どもを育てるとき、親戚が来るとき、昔から作っているものをお出ししているだけ」。その中でも定番は、鶏飯(とりめし)おにぎりです。

「鶏飯はね、安心院に嫁いできた頃は自転車しかないでしょう。お客さんがお見えになっても、お店なんか近くにないしね。かといって車も乗らない。だから庭先で飼っている鶏を絞めてご飯を炊いていたのが鶏飯なんです。農泊を始めたときも鶏飯を作っていたんだけど、夏の時期は傷みやすいので、一時期ちらし寿司とか巻き寿司に変えていたんです。すると常連さんが『今日は鶏飯ないんですか?』って。『何回も来てくださるから飽きたんじゃない?』と言ったら『僕はこの鶏飯を友達に食べさせたくて来た』って。それで翌朝炊いたんです。それから夏も冬も、鶏飯だけは一年中作ってます。家が古いでしょう。だからせめて食事くらいは心のこもったものを食べてもらいたいと思っています」

中山さんにとって「何も特別なことはない」という「舟板 昔ばなしの家」での時間ですが、昔ながらの暮らしぶりはもちろん、四季折々異なる自然の美しさや、心のこもった旬の手作り料理、そして何といっても、囲炉裏を囲んで語らう来客者との交流が、なんども足を運びたくなる大きな理由だということが、伝わってきます。

現在82歳になるという中山さん。農泊の切り盛りは「幸せで楽しい」と話しつつも、すべて一人でこなすのはやはり大変。近年は娘さんが運営を手伝っています。

「私は口だけ手伝って、あとは娘に任せていこうと思っています。ゆくゆくは孫もやりたいと言ってくれていますし、3代続くかもしれませんね。続くといいなと思います」と咲顔で話します。

安心院でグリーンツーリズムが誕生して25年。農泊という文化を着実に築いてきた中山さんは、これから先も変わらず伝えていくであろう大きな一人です。

「人が変わっても、鶏飯おにぎりの味は変わらないように、ずっと続けていきたいですね」と目を細めて話す中山さん。皆さんも、中山さんのお人柄と心のこもった料理に会いに、ぜひ安心院に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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