「農泊」という言葉を聞いたことはありますか? 農泊とは「農村民泊」、つまり「農村の民家に〈泊〉まり、その地域ならではの伝統的な暮らしを、さまざまな〈食〉や〈体験〉を通して味わう旅」のこと。この〈泊〉〈食〉〈体験〉という3つの要素は、農泊に欠かせないものとなっています。

「グリーンツーリズム」という言葉でも全国的に知られるようになった農泊ですが、ここ安心院はそんな農泊発祥の地として、およそ25年にわたって取り組みを続けてきました。そして、これまで安心院が築いてきた農泊をさらに次世代へとつないでいくために結成されたのが、「安心院NGTコンソーシアム協議会」(以下、安心院NGT)です。

これまでの農泊は、〈泊〉〈食〉〈体験〉の3つを、一軒の農家が担うのが一般的でした。対象となった家庭が宿泊施設として自宅を解放し、食事を提供し、農業体験などを通じて交流を行う、といった具合です。しかし、受け入れ家庭の高齢化などにより農泊の数は年々減少。また新型コロナウイルスによる県内外や国内外の人の移動が激減したことなども重なり、安心院のみならず各地域の農泊はこれまで以上に、そのあり方を見直す必要性に迫られています。

安心院 NGTでは、〈泊〉〈食〉〈体験〉の3つを一軒の農家で担うという従来型の農泊から、この3つを分散させることで、高齢化をはじめとした諸課題を解決する一助としたいと考えています。〈泊〉〈食〉〈体験〉の3つを提供するのは必ずしも同一の家庭ではなく、既存の飲食店や体験型サービスとも連携をはかります。3つを分散させることによって、より多様な地域ネットワークの広がりを可能にし、地域経済の活力を高めます。また、農家が抱える経済的・人材的負担を軽減し、農泊の担い手の確保につなげます。

さらに、先駆けて農泊に取り組んできた地域として、農泊に関連するイベントの開催や、SNS、地域メディアなどを主軸とした情報発信にも力を入れていきます。ゆくゆくは私たちのこうした新しい取り組みにより、同じような課題を抱える日本全国の農村地方にとってひとつの針路となれば、この上ない喜びです。

安心院の自然やそこに住まう人々が、ともに築いてきた“農泊”というひとつの文化。私たちは、「安心院の人々」と、そこにやってくる「外からの人々」をつなぐ“橋”のような存在です。さらに「NGT」=「NEXT GENERATION TOURISM」という名前の通り、この農泊を単なる文化として終わらせてしまうのではなく、地域を支える“文化”であり“産業”として発展させていくために、次世代へとつないでいく“架け橋”でもありたいと考えています。目まぐるしく変化するこの世の中で、改めて農村のあり方を模索し、変化を拒まず、そのよさを残していくために、みなさんも安心院の農泊へ足を運んでみませんか?